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2019年8月

2019年8月 1日 (木)

2019年8月アイビー随筆

アイビー随筆8月号
 アイビー随筆「セミの声」
            37年理学部卒 大内 建二
 俳聖松尾芭蕉が「奥の細道」で詠んだ俳句の中に、山形県の山寺の立石寺で詠んだ「静かさや岩にしみいる蝉の声」という有名な句がある。これは芭蕉が元禄2年(1689年)5月27日(新暦の7月13日)に山寺訪問の際に詠んだ句であるが、それから240年後にこの俳句に関する一大論争が持ち上がったのである。
 山形県上山出身の歌人で精神科医の斎藤茂吉(医師で小説家の北杜夫の父)と、東北帝国大学教授小宮豊隆氏との間で昭和4年に「この蝉は何蝉か?」と言う他愛もないことで論争が勃発したのであった。
 この論争は3年後に決着がついたが、決着の行く先は「ニイニイゼミ」説であった。斎藤茂吉は「アブラゼミ説」を譲らず、小宮教授は「ニイニイゼミ説」を譲らなかったのである。
 こんなことは子供たちに聞けば簡単に決着がつくはずなのである。東北地方でアブラゼミが鳴きだすのは7月下旬(7月20日以降)は常識。斎藤茂吉は早くから東京に住んでおり、東京地方でアブラゼミが鳴きだすのは7月上旬頃からである。夏休みに入る頃はアブラゼミはワンワン鳴いていたことをよく覚えている。そして不思議にこの頃になるとニイニイゼミの声は聞かれなくなるのだ。
 ただ芭蕉がこの句を詠んだ7月半ばは確かに両蝉の「端境期?」である。論争もムベなるかなである。 近年温暖化の影響かセミの生息地域に変化が出てきているのである。ミンミンゼミを一回り大型にしたような「クマゼミ」は、本来は近畿地方以西の暖かい地域にしか生息していなかったのであるが、近年関東地方南部でもクマゼミの声が聞かれるようになったそうだ。「シワシワ」という独特の鳴き声から、山口県や一部九州地方ではこのセミを「ワシワシゼミ」とも呼んでいる。私が転勤で広島に住んでいた頃、夏になると朝から自宅近辺ではこのセミの大合唱が始まりうるさかったことを覚えている。

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